【レビュー】異端の祝祭 佐々木事務所シリーズ 【ホラーミステリー】

小説レビュー

評価:★★★★★

失敗続きの就職浪人生・島本笑美。
原因は分かっている。彼女は物心ついた時から生きている人間とそうでないものの区別がつかないのだ。
街に溢れ返った異形のモノたちは、自分の姿が見えていると分かるや否や、笑美に纏わり付いてくる……。

ある日、ダメ元で受けた大手食品会社「モリヤ食品」の面接で、笑美はヤンと名乗る青年社長と出会う。
出会ったその瞬間から、何故か自分に惚れ込んでいるヤンに心奪われ、笑美はそのままモリヤに就職することを決める。
しかし「研修」という名のもと、ヤンに伴われて笑美が見たのは、「ケエエェェェエコオオォォオオ」と奇声をあげながら這い回る人々だった――。

一方、笑美の様子を心配した兄・陽太は、心霊案件を専門とする佐々木事務所へ相談に訪れ……。

ページを開いた瞬間、あなたももう「取り込まれて」いる。
カクヨム発の「ほねがらみ」がTwitterでバズり大反響! ネット民を恐怖の底に叩き落とした驚異の新人作家が放つ、民俗学カルトホラー!

引用 amazon

不気味な集団に取り込まれていく恐怖。驚愕の展開に手に汗握る。


異端の祝祭 佐々木事務所シリーズ (角川ホラー文庫)

全編通して、不気味な空気が漂っているホラーミステリー。
「研修」に参加した新入社員の女性がずぶずぶと飲み込まれていく様子も、「研修」に携わる人々の異様な光景も、恐ろしいと思いながらも気になってしまって読む手が止まらなくなってしまいます。
謎の儀式。正体不明な集団。
気味が悪い彼らに迫っていく内に見えてくる真実。
一筋縄ではいかない展開は、息を呑むものがあります。
このお話、犯人や真相を見つけて、罰する。そんなスッキリとした終わり方では済みません。
本当の幸福って何なんだろうと、ふいに考えてしまう結末でした。

また、登場人物が皆キャラが立っていて、姿が目に浮かぶように生き生きと描かれていました。
不可解な現象に立ち向かう、佐々木事務所のメンバーも個性的で魅力的。
特に、ミステリーの女性登場人物といえば『誰もが目を奪われちゃうめちゃくちゃ美人!!』が多いですけど(そういう女性キャラも大好きなんですけど)、事務所所長のるみさんはぽっちゃり体系眼鏡の見た目気にしない女子なのが新鮮でした。興味のないことには無関心。でもめちゃくちゃかっこいいんです。彼女の過去はシリーズ通して少しずつ描かれているのですが、これもまた重たい…。
相棒の青山くんとの関係が、幸せな方向に進むことを願っています。

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